てにらぼ

テニスを科学する -tennis training lab-

テニスとフットワーク -オンコートスピード-

短い距離でスピードを出すには

前回のブログで、テニスは50・100m走で分かるようなトップスピード能力の貢献はほぼ無いことが分かりました。その理由は「必要な助走距離が足りないから」でしたね。

 

しかし、遠いところに来たボールに対し素早く追いついてフォアハンドやバックハンドグラウンドストロークを打つことを求められる場面があります。そのために4m・6mの短い距離でも可能な限りトップスピードを引き出せる能力がテニスには求められます。短距離での加速が上手く、抜群のコートカバー力を誇る清水悠太選手のプレーを覗いてみましょう。

 

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最初のトレーニング動画では、6mの距離をおよそ1.4秒内でカバーリングしています。つまり4mを1秒でカバーできる相手・・・敵に回したら恐ろしいですね(笑) ラケットを持った時でも、トレーニング動画の時と遜色ないスピードで動けています。

清水選手の優れた点は、ピッチ(歩数)を急激に増加させることによって加速できることです。1秒以内に4歩出します。鬼速いです。

 

短い距離での速度の立ち上がりには、このようにピッチの増加が大きく貢献します。しかし1歩1歩が短いのでは意味がありませんよね。足の接地時間が短いながらも大きな推進力を得て、素早く次の足を出しているから優れているのです。

 

推進力は「地面を蹴る力(F)×作用する時間(t)」(方向は無視します)という力積に基づいて考えます。足の接地時間(t)を短くしつつ、推進力を得ているわけですから単位時間あたりの(F)が大きいということです。

 

推進力 = 蹴る力 × 足の接地時間

 

 そのため「短時間に大きな力を発揮することを素早く繰り返す」トレーニングが有効となります。代表的なトレーニングがプライオメトリクストレーニンです。

 

ショートレスポンス(接地時間0.25秒以下)

フットワークに役立つトレーニングと言われてあなたは何を思い浮かべるでしょうか。下半身を使うスクワット、レッグプレスマシーン、単純な短距離走、ラダー・・・etc 

これらもやり方によっては正しいトレーニングです。しかし「スクワットが100kg上がる」「レッグプレスが180kg上がる」といった最大筋力がテニスコート上でのフットワークに反映されているかは別に考えなければいけません。

なぜなら、重いウェイトを上げる時のようなじわーっとパワー発揮する場面はテニスにおいてサーブを除いて無いからです。

 

コートでの素早いフットワークにおける足の接地時間は0.25秒以下のショートレスポンスです。この時間内で推進力を発揮させるということは、時間をかけて発揮される最大筋力の貢献はまずないということです。

つまり、テニスコートで素早くなるためには、短時間(短い接地時間)で大きな力を発揮することを目標にプライオメトリクストレーニンを導入しなければならないのです。

 

ではプライオメトリクストレーニングの例を挙げてみましょう。

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プライオメトリクスとは、着地で伸ばされた足の筋肉が、すぐに筋活動を行うことによって縮む「弾性収縮」を利用した運動です。疲れてくると動作が遅くなり弾性収縮が上手く利用できないため、トレーニングの際は休憩を多めに挟みながら行う必要があります。

 

ボックスドリルの例のように接地時間を短くし、足を素早く入れ替え、その中でパワー発揮するトレーニングを繰り返すことによって短い距離でも推進力を得て、可能な限りトップスピードを引き出せるようになります。テニスだけでなく、バスケットボールやハンドボール等の助走距離の少ないコート条件下でスピードが求められる競技では有効なトレーニングとなります。

 

まとめ

プライオメトリクスについて、何となくイメージしていただけたでしょうか゚(´ε`;)

プライオメトリクスを一言で表すと「反動を使って素早く動き出すこと」です。これだけでも覚えればトレーニングに関する知識が一層深まること間違いなしです。

このような神経ー筋の改善トレーニングはやったことがない人ほど効果が高いので、試してみる価値があります。俗に言う使ったことない神経を使うってやつですね。