てにらぼ

テニスを科学する -tennis training lab-

テニスと体力 -有酸素能力とはー

全身持久力=有酸素能力

 今回は動作から少し離れて、テニスに必要な体力要素について「全身持久力」をテーマに考えていきたいと思います。

 

全身持久力は体力やスタミナという言葉にも置き換えられており、学校の新体力テストのシャトルランテスト」でも測定されています。これは折り返し回数に応じて電子音がリズムアップして速度が上がりましたよね。このように運動強度が増加するとゼーハーゼーハーし、体が必要とする分の酸素を取り込もうとするのは実感して分かっていることと思います。

有酸素能力とはこのように強度に比例して体の中にどれだけ酸素を取り込むことができるかという能力のことで、シャトルランテストはこの有酸素脳能力を間接的に評価できるテストとなります。

 

今回は全身持久力を、体の中に酸素を取り入れる能力=有酸素能力に置き換えて、テニスに求められる体力について説明していきます。

 

テニスの試合では、マラソンマッチと呼ばれるような長い試合が(時には1セットマッチでも1時間を越えることが...)ありますよね。とすると筋トレだけではなく、マラソンのような有酸素能力のトレーニングも大切な気がします。

トップ選手の有酸素能力自体、一体どれほどのモノなのか覗いてみましょう。

 

有酸素能力の評価指標:VO2MAX

まず理論ですが、難しく考えずに数字に注目しながら読み進めていきましょう(∩゜д゜)

 

 酸素・栄養素が含まれた血液を運ぶ心臓や、循環させる各器官、身体の各組織での細胞の酸素利用能力などによって個人の有酸素能力は決定されます。

これら心臓・血管・呼吸器の生理学的な反応による運動能力はまとめて「呼吸循環系能力」と言います。

持久系の筋タイプだから疲れにくいという話ではなく、肺や心臓等に着目した「呼吸循環系能力」から有酸素能力を評価しようとする時の代表的な値がVO2MAX(最大酸素摂取量)です。

 

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上の写真のような装置(ほかにも自転車)で、被験者を疲労困憊まで走らせた際の呼吸を分析し、単位時間当たり最大でどれだけ酸素を体に取り入れる能力があるかを実測で明らかにできます。

イスに座っている時・このブログを見ている時など日常生活における酸素摂取量は約3.5ml/kg/minと言われてますが、この時体重80kgの人は1分間に約281mlの酸素を摂取している計算になりますね。

 

最大運動時には安静時の約20倍までこの酸素摂取量は増加します。各個人の体格によっても酸素摂取量は変化するため、必ず体重当たりの値(単位:ml/kg/min)で相対値を出します。

 

このVO2MAX(ml/kg/min)が高いほど、体重1kg当たり1分間当たりに使える酸素量が多い=細胞で生み出せるエネルギー量が多い=より長い距離を速度を落とさずに走れるということになります。

もっと簡単に言うと、より速いスピードで長い距離をランニングできる(フルマラソンのタイムが速くなる)ということです!戦闘力と一緒で、高い人程、有酸素系の競技能力に優れているのです。

 

VO2MAXの全国平均値を見てみましょう

一般成人男性・・・43ml/kg/min

一般成人女性・・・35 ml/kg/min

例:60kgの成人男性は1分間に最大約2580ml(約2.6L)の酸素摂取が可能

 

男性の方が活動する筋量が多い分、酸素を多く消費するため若干高くなる傾向があります。

 

前置きが長くなってしまいましたので、トップ選手のVO2MAXとテニスに本当に必要な体力については次回掘り下げてみましょう。

 

テニスとフットワーク ーオンコートのSAQー

テニスと最大疾走速度

さて、記念すべき第一回目の記事は「足の速さ」についてです。

球技スポーツにおいて、足が速いことは重要な要素となります。

ボールに素早く追いつくため、素早く陣地に戻るためなど当たり前ですが速いことは基本的に有利に働きます。

 

人間の最大疾走速度(トップスピード)というものは、直線走を行わせて20~25メートル地点において出現します。逆に言えば、およそ20mの助走がなければその人が持つ最大疾走速度は出せないということです。学校の体力測定にある50m走測定などはこの最大疾走速度の能力を評価しているわけですね。(補足:陸上選手は約50m地点で出現します。そのため短距離種目は100m~となります)

このような測定で明らかになったトップスピードはテニスにおいて必要なのでしょうか。テニスにおいて重要な、ボールに素早く追いつける、素早くポジショニングする能力とどのように関わりがあるのでしょうか。

 

 

スピード・アジリティ・クイックネス

 

スポーツの世界では共通して「スピード」「アジリティ」「クイックネス」という言葉を用いてフットワークを評価します。

 

スピードとは上述した最大疾走能力、いわゆるトップスピードの能力

アジリティとは、敏捷性のことで素早い前後左右への方向転換能力(切返し能力)

クイックネスとは、主に静止した状態から1歩目を素早く出すような反応能力です。

 

サッカー・野球・バドミントンなど競技に応じて空間が違えば、求められる能力は異なってきます。テニスはどの能力が重要なのか、テニスコートのサイズから考えてみましょう。

 

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シングルスコートは横幅約8m、縦幅約12mあります。

最大疾走速度が出現するのが直線走で20~25m地点ですから、20mの助走距離が取れないコート上においてはトップスピード能力の貢献はほぼ無いはずです

 

テニスコート上でのアジリティとは、打った後のサイドステップやクロスオーバーステップによってリカバリー(センターへ戻る)する方向転換動作と考えられます。ストローク動作の80%は2.5m~4.5m以内で行われている(Ferrauti ,2003)ため、この距離を素早く戻れることがアジリティの評価となります。ダウンザラインを相手に打たれ、サイドラインいっぱい追いついて打球した後などは7m位リカバリーする可能性もありますね。

 

クイックネスとは、ボールに対し素早くスタートし追いつくための、1歩目を素早く踏み出す能力です。これは、ボールを見て筋に刺激が伝わる反応(筋・神経系)、経験からの予測、スプリットステップのタイミングによって発揮されます。優れたクイックネスによって、ラリー中に素早くボールに追いつけると主導権を握ることができます。

 

以上を踏まえ、打点に素早く到達(クイックネス)し素早く戻る(アジリティ)能力がテニスにおけるフットワークの本質であると言えます。そのためこの2つを強化することがまずは重要です。共通しているのは素早く蹴り出す能力であり、筋・神経系を強化できるプライオメトリクストレーニング(ジャンプ→着地のエネルギーで素早く動き出すトレーニング)筋肥大を狙ったレッグプレス・スクワット等で強化することができます。予測能力は、日々観察力を磨くことがそのままトレーニングになるでしょう。

 

短距離が遅くても、どんなボールにも追いつける人は周りにいませんか?

テニスのフットワークは3・4歩内で優れていれば良いのです。

ブログ始めました!

オーストラリアがテニス先進国だとか、スポーツ科学はアメリカが最先端であるとか、よく言われていますね。海外の文献を読むとそれがよく分かり、日本の文献でまだはっきりと書かれていないトレーニングやテニスに関する知識を得ることができます。

 

このブログでは、将来自分自身がより良いサービスを提供できるよう、それら知識を基にした研究・現場指導から得られたエビデンス(根拠)を基に記事を書き、、、

単なるアウトプットの場とするのではなく、全てのアスリート、一般プレイヤー、指導者・保護者、クラブで楽しんでいる会員さん、ダイエットや流行りにのってラケットを衝動買いした人...など色んな人に読んでもらい、楽しんでもらえるよう分かりやすい形で発信していきます!

 

主なテーマとして・・・

上手い人の特徴(打ち方・考え方)ってなんだろう?

テニスってどんな体力がつくの?つければ良いの?

そのためにはどんな練習方法・トレーニングが有効なの?

食事はどんなことに配慮すればいいの?

 

などをスポーツ科学的視点(打倒テ〇マガ!)から書いていきますので、宜しくお願い致します!!

 

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